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2014-10-05

ドレスデンへの旅・3

9月15日(月)、ドレスデン3日目、夜中何回か目覚め六時半に起きたとたとメモに在る。この日は初めての快晴、ほんの少しドレスデンにも慣れ、涼やかな気候が、なんとも肌に気持ちがいい。

この日、怜君たちは式の準備で忙しく別行動、我々3人は自力で市内観光へと繰り出した。お恥ずかしいくらい何の予備知識もなく、ただ両替をして少し市内を散策しようよ、くらいの軽い気もちでただ出かけただけなのである。

式に参加するための旅あり、終日我々だけの時間が持てるのどうかさえ分からなかったし、だいたい旅には、あまり余計な予備知識は持たずにゆく方なので、いつもの通りのゆきあたりばったりの行動。

出かけるの当たっては、用意周到な怜君が、事前に一日乗り放題の、バスとトラム(市内電車)のチケットを買ってくれていた。それに乗って(ホテルの前にバス停がある)86番のバスで8時過ぎホテルを出る。

途中、バスの降りる場所を間違えたが、なんとか歩いて、トラムに乗り換え、トラムの中で、ちょっと勇気がいったが、少し顔の固い30代の男性に、ドレスデンの駅にゆきたい旨なんとか伝えると、あにはからんやとても親切で、乗り換えのトラムまできちんと教えてくれた。旅はハプニング。

いい意味で旅の恥はかき捨てである。何事もアクションを起こさないと始まらない。ただきちんと訊くべく、判断する相手を選ぶには何事にも、試練修行が必要であることはもちろんである。

ドイツ人は、一見気難しく感じるがそんなことはない、いかめしそうに見えた人が、柔和な顔になるのを見るのは、実に楽しい。向こうだってそこはかなく、異邦人に関心を持っていたりする場合もなくはないからだ。

ところでバスの中には、自転車も持ち込めるし、歩道と自転車道が厳しく区別されていて、歩道への自転車の侵入は罰せられると聞いた。人間優先社会である。

さて、駅に着いたのが9時ころ、我々は朝食がまだだったので、日本ではほとんどゆかないマクドナルドで軽くすませ(日本でのイメージとは違って、街の景観を壊さないような店舗になっていた)、ドレスデン中央駅でユーロに両替。

両替率は、手数料を取られるので分が良くない。次回からは日本で事前に両替してゆくことに決めた。何事も経験することによってしかわからないことが、旅の授業料である。特に未知の国を旅する場合は。非日常なのだから、日常の金銭感覚はしばし忘れて旅を楽しむことが肝要。

旅番組なんかでは、いいところや美しいところしかやらないので、以前も書いた気がするが、若いうちの未知の国への旅を、とくに私はこれからの若い方には薦めたい。若い時間は二度と来ないのだから。経験という宝を体に詰め込んでほしい、お金は取り戻せる。

ちょっぴり、懐に余裕のできた我々は、立派な駅(ヨーロッパの駅が私は大好きである、映画の舞台になるのもうなずける)からおもむろに旧市街の方角に向かって、人にたずねながら歩き始めた。トラムでゆこうかとも思ったのだが、意外や娘が歩きたいというのでそういうことに。

空間がたっぷり、古都にふさわしい落ち着いた街並みに、あの未曾有の爆撃から70年、ドレスデンの町並みはかっての面影を見事に取り戻していた、すごい執念と誇り。

30分近く歩くと、教会をはじめ、復元された広場、王宮後などが次々と我々の眼前に現れてきて、すっかり旅人に変身、あまりの普段の暮らしの街との違いに、気分は異次元に。(最後のプラハで再びこのような気分になった)

旧市街は、秋の訪れとともに観光客でにぎわっていた。美術館にゆこうということいなり、なんとか美術館にたどり着いたのだが、あいにくの休館日で残念だった。書いているといろんなことが思いい出される。

歩く速度で視界が変化するので、健康で歩けるということはまさに旅の醍醐味、贅沢。世界遺産ではなく、自分遺産。妻も娘もあの固い石畳を良く歩いたと思う。疲れて私と妻は、広場のカフェで生ビールを飲んでやすんだりしながら新婚旅行以来の、ヨーロッパの石畳の街のドレスデンを満喫した。

さすがに歩き疲れお腹がすいた。肉は食べたくないということで、探し回った挙句、結局手軽なパスタの店に入った。が、これが期待外れ、お腹が空いていたし、お金も払ったので、私はなんとか平らげたが、妻は残した。今も3人での笑える話題になるほどにまずかったが、今は良き思い出。

パックのパスタを電子レンジで温めて出すだけなのだから、あきれる。それでもそこそ客が入っているのだから又あきれる。おまけに外にいる雀が店内のテーブルの上に鎮座していたりするのだから、あきれ果て、世界の多様な真実に首を垂れる。

食後は、気分を変えてショッピングタイム。私と妻と娘では買うものが違うので、待ち合わせ場所を決めて別行動。旧市街に隣接して、建物は落ち着いた大きなビルディングなのだが、なかはモダンなショッピングモールが地下一階地上3階まであったので、そこで2時間近くを過ごした。

私にはドイツで買いたいものが一つあった。それはパーカーの万年筆である。この機を逸したら買うチャンスはないと思ったので、私は広い店内をひたすら万年筆を捜して歩き回ったがこれがどこを探しても万年筆を売っていないのである。

もう半ばあきらめかけていたときに、メガネショップの親切な男性がひょっとしたら、あそこの文房具やさんにはあるかもしれないというので、私はただちにそこに向かった、在った。3つの会社の万年筆が各2本ずつ置いてあり、同じ種類のパーカーが2本のみ鍵のかかったガラスケースに収まっていた。

私としては、たくさんの種類のパーカーの中から選びたかったのだが、それしかないのだからこれも運命と諦め、その2本を買った。ドレスデンで買ったパーカーは旧市街とともに思い出の一品になった。(もう一本は親友K氏への退職祝い)

買い物を終えた妻と娘と落合い早めにトラムで帰る。街での外食に懲りたのと節約も兼ねて、せっかく自炊設備があるのだから、ホテルの近くのスーパーで食料品を買ってホテルで夕食をしようということになり、86番のバスが止まる大きなスーパーで再び買い物。

ワイン、ビールやハムやチーズ紅茶などを滞在中困らない程度に買いこんで部屋の冷蔵庫にしまったのだが、食い物があるというだけで、どこかほっとし気が休まる。

ドイツのスーパーは、い入り口と出口が異なる。いったんは行ったら、レジのある出口から出ないといけないのである。お金は戻るのだが、ショッピングカートもお金がいるし、置き場所が決まっていて、鍵がかかる仕組みになっている。もちろんショッピングバッグ持参である。

たくさん買い物をしてバッグを持っていなかったのが、たまたま段ボールがあったので、それを失敬、着ていたセーターでなんとかくるみ、担いで急場をしのいでホテルまで持ち帰った。

ドイツ人の暮らしは、無駄がなく合理的、学ぶことが随所にある。というわけでドレスデン三日の夕食は、ホテルでシンプルに済ませた。

歩き、見て、食べ、飲み、石畳を走る馬車の音を聴き、肌で、街の匂い、風を感じ、異邦での久方ぶりでの旅の実感が3日目にして、私の中に湧きおこってきた。









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