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2023-09-03

青春18切符の旅で、18才の青年に出会う、古稀を過ぎた私の意外な展開、ふるさと帰省老春旅の結び。

 ふるさとを朝6時10分延岡発の在来線で佐伯に向かった。駅までは兄が朝早いのに送ってくれた。以心伝心のいつもの短い言葉のやり取り。暫しふるさととはお別れだが、五十鈴川だよりを打ち続け、つまり生きている私の中には、いつもふるさとへのある種の名状しがたい思いが、消えたことはない。特に両親が亡くなってからの、この20数年は何度も何度も足しげくお墓参り、帰省旅を繰り返している。

理由はない。あえて打つなら、私が生を受けた土地だからというしかない。命のルーツ、そして幼少期を共に過ごした、姉や兄が今だ健在だからである。年に数回帰省することで、生き返るかのように体が元気になるのが不思議である。

さて、在来線で約一時間佐伯に着いた。(この間の鉄道山越えの風景は、この半世紀ほとんど変化がないのが素晴らしい)そこで約30分大分行き在来線待ち合わせ、駅のベンチで、登紀子さんが作ってくれたおむすびを2個ほうばり、朝食とした。

大分に着き、すぐに9時14分発の在来線で中津へ、10時20分到着。小倉行きまで30分近い待ち合わせ、そこで前回打ったように、ベンチでおむすび2個をほうばり早めの昼食とした。延岡から中津まで車中、養老孟司先生の新書版の本、半分生きて半分死んでいる、を読み終えた。(この度の帰省旅では3冊養老先生の新書版の本、人の壁、自分の壁を持参、すべて読んだが、あまりの教養の深さ、思考の柔軟さに何度も膝を打った。これからも繰り返し先生の本を読んで心のビタミンとする)

レイさんが送ってくれた一枚

おむすびを食べていると、一人の若者と目線があったが、それ以上の出来事は起こらなかった。10時47分の在来線で小倉へ向かい、11時14分の在来線で下関へ。そこでまたもや乗り換え小月へ。ちょうどお昼頃、新山口、徳山へ向かう在来線を待っていると、あの中津で見かけた若者がホームで写真を撮っていた。彼もあれから同じ電車を乗り継いでいたのである。

ベンチで休んでいると、私のとなりにかなりの荷物と共に彼も座った。すると彼の方から、飲み物を買ってくるので、荷物を見ていてほしいと頼まれたのである。お安いご用オーケーの指をたてた。驚いたのは冷たいお茶を私の分まで買ってきてくれたことである。

その事が縁で話をするようになったのだが、彼の落ち着いた話し方から、20代半ばくらいの年齢に見受けられたのだが、なんと高校生18才だというではないか。私の中で純粋直感、好奇心が沸き起こり、にわかに会話が転がりはじめ、ほとんど私が質問し、彼が答えるという形で車中気まま旅が進行した。

この夏の終わり、高校生最後の夏を、四国、屋久島と旅し、昨日は別府に泊まり、今日青春18きっぷで家のある兵庫まで帰る途中だというではないか。彼は何台かのカメラを持参していてた。来年から大阪の写真の専門学校で学び将来は写真家を目指すという。この夏の旅で撮りだめた屋久島の写真他を暫しスマホで見せてもらったのだが、写真のことはよくわからないわたしにも、18才が撮ったとは思えない、センスのきらめきのような(今しか撮れない)感性を感じたのである。

何よりもあの若さで、古稀を過ぎた私と世代を越えて普通に話が転がってゆく、その事がたまらなくわたしには心地よかった。初対面なのにライン交換をしてしまうほどに。話に夢中になっていたら、山口の富海(とのみ)という駅でおおよそ一時間以上、トラブルで列車が停車。その間に私は彼がスマホのデザリング機能で五十鈴川だよりを打てるようにしてくれたので、即興で車中で打つことができた。

このトラブルで、旅の行程が変更を余儀なくされ、今日中に兵庫に帰るのは無理になり、彼は広島に泊まることになり、私も広島から新幹線で帰ることにした。広島に着いたのが午後7時過ぎ、宮島を過ぎる頃、海上に浮かぶかなりまあるい月を二人して眺めたのだが、彼は月の写真もたくさんとっていて見せてくれた。打っていると彼のしぐさや動じない態度が思い出される。

臨機応変、想定外のことが生じても、前向きにスマホであっという間に宿を見つけてしまうところに、彼の素直な適応能力の高さを見た。そして、こつぜんと18才で急行高千穂(当時一番安いチケットに乗り25時間かかった)に乗り体ひとつで上京した自分を思い出した。

あれから半世紀以上の歳月が流れ、今の私は老いゆく我が身なれど、今だ時おり在来線でののんびり鈍行旅を楽しんでいるからこそ、神がこの若者との出会いを設定してくれたのではないかと思える(物語かしたくなるほどに)。

ともあれ、世代を越えて語り合え私は幸福だった。広島の駅で私たちは再会を約束し、かたい握手をしてお別れした。

PS 彼とのご縁を機に彼と同じLUMIX カメラを私も購入することに決めた。

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