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2023-09-10

京都までの日帰り旅のお供に、日本文芸家協会編2019年ベスト・エッセイを読む、そして思う。

 今だ厳しい暑さが続くこの夏ではあるが、朝夕は幾ばくか涼しくなり五十鈴川だよりを穏やかな気持ちで打てる朝が、オーバーデはなく言葉にならないくらいに嬉しい。

さて昨日は、思い付いて老春18切符で京都まで往復してきた。目的は作家佐藤優さん(私にとっては先生であるまれな方だが、さんと呼びたくなる)が若き日学んだ同志社大学、そして今は腎臓透析をされるお体でありながら、今も時おり教えておられるという神学部の建物を見てみたかったことである。大学のある今出川キャンパス界隈を歩く、ということくらいの軽い気持ちでの日帰り旅をしてきた。休日だったので神学部の建物に入ることは叶わなかったが、出掛けてよかったことだけは、五十鈴川だよりにきちんと記しておきたい。

書物は人との間接的な出会いである

このエッセイ集には様々な職種の方々の76人のエッセイが納められている。いずれおとらぬ個性あふるるきら星のような一文が掲載されている。身につまされたり、じーんと目頭が熱くなったり、へえーっと驚かされたり、とまるで魔法のようなそれぞれの書き手の、その人らしいエッセイが紡ぎだされていて、まさに読書の喜びを私は堪能した。

76本のエッセイのうち名前は知っていても、その方の文章は読んだことがない方が50数人いた。フリーライター・歌人・理学研究家・詩人・教育者・著述家・小説家・作家・劇作家・演出家・日本文化研究所教授・ドイツ思想家・リベラルアーツ研究家・批評家・ノンフィクション作家・エッセイスト・芸人・歌手・映画ライター・国立博物館館長・霊長類学者・落語家・弁護士・映画監督・国際日本文化研究せんたー教授・精神科医・随筆家・音楽文化研究家・SF作家・翻訳家・振付家・ダンサー・作曲家・フランス文学者・社会学者・書道家・音楽家・映像作家・俳人等本当に多種多様な現代の日本語の言葉の豊かさを思い知らされた。

全く知らないかたたちののエッセイを、いきなりたくさん読んだのだが、その事がどれ程我が体に新鮮な喜び、新たな未知の世界の扉を垣間見させてくれたことか、あえて五十鈴川だよりに打たずにはいられないほどに、多様な肩書きの方々の個性アふるる一文が掲載されている。このような方々の文章を読むと、超マイノリティ世界に生きる人間の素敵さをこつぜんと知らされる。

一昨日の夕方、旅のお供の本を図書館に探しに行った際にこの本を選んだのは、社会学者である一度読んでみたいと思っていた岸政彦さんのエッセイが収められていたからである。エッセイのタイトルは[【猫は人生】これが実に素晴らしかったからである。(もし関心のある方いらしたらおすすめいたします)生きて、動いて、世界と出会い、今を生きる自分に出会うのである。老いの旅はますますもって一期一会である。


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