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2019-08-15

敗戦の日・大塚初重氏と五木寛之氏の稀な対談集【弱気ものの生き方】を読む。

敗戦記念日の今日、台風一過のニュースにまるで、かき消されるかのような(そのように感じるのは私だけであろうか)感じがしてしようがない。

先の大戦の記憶を肌で感じた世代がこうも少なくなると、戦後世代で浮かれた青春時代を送った私としては、いよいよこれからは、真剣に明治からの近代化、戦前戦中戦後の現代史を、庶民の視点から性根を入れて学ばねばとの思いにかられる。

今日は、とくに敗戦記念日だからというわけではないが、台風のおかげで朝から大塚初重さんという考古学の大家と、五木寛之さんの【弱きものの生き方】対談集を朝から読んで過ごしている(もう少しで読み終える)

1926年生まれの大塚先生と、1932年生まれの五木さんお二人が、赤裸々というしかない、これまでは発言を控えてこられた事実を、告白されておられる。

今から12年前に上梓された御本、当時大塚先生が81歳、五木さんが75歳の時の対談。お二人とも青少年時代の敗戦の時にに受けた、あまりにも生々しい事実を、まさに相手を得て、勇気をもって語り合っておられる。

内容については、あえて言及しない。必読の価値がある対談集であるとだけ触れておくにとどめる。人間とはまさに善悪を往還する(せざるを負えない)弱きものであるとの認識にいたる語り部お二人である。

波乱万丈というしかない、正直なお二人の対談は、たまたまであるが敗戦の日に読むにふさわしい書物となった。こうまでも人間を鬼畜化する戦争のおぞましさ、むごさ、残酷さ、不条理、その中で一瞬垣間見れる人間性の美しさ等々の、まさに体験した出来事が、真実の情景をもって語られる。

毎日新聞社から出版されています。
悲惨という簡単な言葉では語れないほどの、人間という生き物の不確かさがいややが上にも浮かび上がる対談、高齢のお二人が意気投合し縦横にあの敗戦を生き延びた過酷な体験の筆舌に尽くしがたい痛ましさ、苦しみを勇気をもって語っていらっしゃる。

もし自分がそのような目に遭ったら、どのようにふるまったであろうか、といやでも考えてしまう。いざという時にとった思わぬ自分自身の行動。受難、受苦を抱えてお二人は戦後を生き延びる、苦しみから逃げない、弱さを見つめたたかい続ける。そこがすごい。

悲しかな一見平和が長く続くと、人間は流され、忘れる、そしてまた元の木阿弥、繰り返す、その愚は繰り返してはならない。心が砂漠化、思考停止になるのか、昨今の(この数十年相も変わらず続く)このあまりの心の荒廃の雑多な出来事ニュースの、嫌になるほどの連鎖、でもお二人は希望を失わない。

このような対談本を私よりも若い方々には、ぜひ手に取ってもらいたい。多くの問題を抱えてはいるが、今がいかにありがたい時代であるのかということを私はひしひしと感じる。遺言ともとれるお二人の対談。

今も悩みつつお二人は前進する。高齢なにするものぞ、その内省的な歩みが目線が低く素晴らしい。人間は捨てたものではない。お二人のその後の敗戦からの豊かな努力の生き方でもって、後進に困難を生きる多様なヒントを示唆する。お二人の人柄がにじみ出る、稀な対談本である。

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