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2023-08-20

猛暑の夏、ギリシャ悲劇、ソフォクレス作、オイディップス王を演出した石丸さち子さんと40年ぶりに再会、そして想う。

 お盆を過ぎても相変わらずの猛暑が続いている。私なりに猛暑のやり過ごし方を考えてはいるにしても、正直もううんざりしている。が、生きねばならない。そのような日々のなか、思わぬことが起こる夏である。

昨日午後2時半から兵庫芸術文化センターで行われた【石丸さち子演出のギリシャ悲劇の最高傑作といわれるオイディップス王】を見てきた。なぜわざわざ観に出掛けたのか。石丸さち子という名前を新聞紙上で見つけたときに、ひょっとしたら、シェイクスピアシアターの同期生で共に芝居をしたことがある、あの石丸さち子さんであるかもしれない、と思ったからである。結果はやはりあの当時の記憶しかない石丸さち子さんであった。

何せ40年近くお会いしたことがないのに、会ってくれるかどうかもわからないのに、いきなり劇場に訪ねても失礼にあたるかもしれないという気もしたのだが、この機を逃したら、という気持ちのほうが勝って、開演前、楽屋口から私の名前を出してお会いしたい旨を伝えると、腰の柔らかい有能な女性のマネージャーのかたが出てきてくれて、わざわざ遠方から来てくださり、とお礼を言われ、リハーサルを終えたら石丸が会うと言っております、と告げられた。

その瞬間、来てよかったと心から思った。その上チケットは完売であったのだが、たまたまキャンセルが一枚出たその席を私のためにあてがってくださったのである。開演前客席に座っていると、日高さんと、私を呼ぶ声が通路から聞こえてきた。40年ぶりのさち子さんであった。ロビーで寸暇立ち話(当時まだ彼女は早稲田大学の学生ではなかったか)演出家として見事に大成された、石丸さち子さんとの再会が叶った。紆余曲折、お互い苦楽の果ての再会は、同時代を熱く生きたものだけが味わえる喜びである。

遠いところよく来てくださったとお声かけしていただき、恐縮しつつも嬉しさが込み上げてきた。大人の女性になられていた。再会の握手をした。私のほうがずいぶん年上だったので、当時ずいぶん生意気な口を利いたかもしれないのに、柔らかく暖かく対応してくださった。東京公演以外は兵庫芸術文化センターだけ、千秋楽でてんやわんやの最中、寸暇わざわざ会いに来てくれたことが本当に嬉しかった。電話とメールのアドレスのメモをいただき、東京での再会を約束した。

開演前の舞台

私はギリシャ悲劇として名高い、ソフォクレス作、オイディップス王を石丸さち子演出で初めて観劇した。昔ともに芝居をしたことのある仲間が、大輪の華を咲かせたとでもいうしかないほどに演劇人として立派に成長したお仕事をされていることに感銘を押さえることができなかった。

正攻法の演出で戯曲を読み込み、奇をてらったところがなく、私の知らない三浦涼介という俳優さんが主役のオイディップスを演じたのだが、徐々に彼の演技に引き込まれた。演技人のチームワーク、アンサンブルがとてもよく、演出家が自然に俳優の良さを、力を粘り強く引き出しているのが、私には伝わってきた。

現代の俳優がオイディップス王のおかれた苦悩を全身で表現し、現代劇としてよみがえり、それを私は観ることが叶った喜びを、五十鈴川だよりにうたずにはいられない。これからの彼女の演出家としての仕事が楽しみである。今後、石丸さち子さんのお仕事は可能な限り、見届けたく想う。

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