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2019-11-03

2泊3日上京旅・その2。

昨日の続きを書いておかねばと思う文化の日の朝である。約一時間夜明けの公園で声出し(夏の夜の夢のいろんな登場人物の長いセリフの)を終えて帰ってきたばかり、この一文を書いている2階の窓にまばゆいばかりの朝陽が差し込んでいる。

さて、月曜日夕方の新幹線までの間どう過ごそうかと考えながらホテルを7時半過ぎにチェックアウト、月曜の朝なのでこの時間帯、地下鉄は出勤のサラリーマンで混んでいるし、しばし思案し思い切って有楽町まで歩くことにした。

思えば上京したてのころ、貧しく、そして少年期から青年期へと向かっていた私は、底知れぬこれからの未知の人生に対する不安を抱えながら、未知の東京のあちらこちらを、さ迷い歩いたものである。未来に対する不安と、矛盾する未来に対する得体のしれぬきたいと渇望。

あれから半世紀、老いつつあるわが体で、都心部をもう一度歩けるうちに歩いてみようとのおもいが忽然と湧いたのである。まず溜池まで出て、虎ノ門、新橋、霞が関から日比谷公園と抜け、皇居の見事な松を眺め9時過ぎに有楽町についた。背中に荷物を背負っていたのだが、お天気も良く散歩がてら気持ちよく歩くことができた。

思いのほか自転車や、歩いて諸官庁(このエリアは国の中枢の官庁がひしめいている)に吸い込まれてゆく人々を多く見かけた。私とは異次元の世界で生きている方々の生態を観察しながらの散歩は楽しかった。この朝のウォーキングは今後上京する際の楽しみの一つにしたいと思わせるほどの充実感が私の中に広がった。

世はまさに高齢化いかんにかかわらず、巡礼地をめぐったりと歩くことが大はやりだが、私の場合は、半世紀を起点にして第二のふるさとともいえる、メガテクノポリス東京を老いゆく身体で歩けるうちに歩いてみたいとの気持ちが湧いてきたのである。ふるさと五十鈴川を歩くのと、東京ウォークの両極を歩く、歩けるうちに。

話を変える。有楽町についた私は荷物をコインロッカーに入れ(すっかりデジタル化されているが慣れてきた)身軽になって銀座をぶらぶらする、このぶらぶら感がたまらなく自由でいいのである。


本は帰りの新幹線で読み終えた

足はよく通った界隈の映画館へ、驚いた。よく見た好きな映画館スバル座が閉館していたのである。ちょっぴりセンチになった。おなかがすいたので、スバル座のビルの地下にある昔風の喫茶店でかろうじてのモーニングタイム。今はすっかりカフェスタイルが多くなったが、まだかろうじて昭和の雰囲気を残しているお店があるのが東京の良さである。

中年の女性の方が一人で営んでおられた。そこそこの大都市の値段で全く驚かなかったが、とーストもコーヒーもおいしく、ミルクも生であった。店内には私の好きな落ち着いたジャズが流れていて数人しかお客がいなかったので、ゆっくりと時間を過ごさせてもらった。

午後、私の足はこれまた昔よく通った映画館シネスイッチ銀座で上映されているドキュメンタリー映画【樹木希林を生きる】を観に向かった。今回の旅の最後にこのドキュメンタリーフィルムを見ることができて本当に良かった。見終えて私は早めに東京駅に向かい遅い昼食を済ませ、新幹線に乗り岡山に帰った。実りの多い旅となった。

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