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2026-08-19

ロンドン6日目、朝、ハマースミスの宿で打つ五十鈴川だより。

 一人になって丸2日が経った。ハマースミスの宿で朝打っている。昨日のロンドンは終日雲でしのぎやすかった。今日も外を見るとどんより雲空である。さあ今日は何をしようかと思案している。夜はマチルダをみる。それまで時間はたっぷりある。昨日も打ったが、名所旧跡の類いには、関心が向かない。だから昨日は、ホテルにあった地図を片手に、ホテルでゆっくりブランチをして、ハマースミスからハイドパークまで、おおよそ二時間半休み休み歩いた。

ハイドパークにはホースロードが。

この突然の思いつき、雲り空だったから実現したが、快晴で、夏の暑さのなかでは、先ず思いつかなかった思う。地下鉄で、乗り降りするロンドンの人びとを眺め、バスから、街並みを眺め、最後はウオーキング、歴史的大都市中心部までをあるくことで体感したくなったのである。

理屈ではなく、74歳の体での想いでを、歩くことで刻みたかったのである。一歩一歩、歩を進める毎に視界が開け、歩く速度でしか感じられない風景が出現する。

古い樹齢は数百年は経っているであろう街路樹の立派さに見惚れ、導かれるようにただ歩く。街路樹もだが、公園やスクエアには、無数の大木(樫木、メイプルなどの広葉落葉樹)が存在していて、そろそろ秋の気配、ハラハラ舞い降りる落ち葉は、一本の樹木のそれだけで、気が遠くなるほど無数である。

その木の葉を掃いて集めて、大きなビニールの袋に入れている仕事をしている人を多くみかけた。さもありなん、誰かがこの美しい景観を守っているのである。

至るところにスクエアがあり、ベンチがある。そこで水を飲み、地図を広げ現在地を確認し、地下鉄やバスが走っているメインロードを歩く。午後2時(3時間近く歩いた)過ぎにハイドパークに着いて、広大なハイドパークのなかをほぼ一時間散策する。

大きなパークの中には池があり、白鳥や鴨をはじめとする多種類の水鳥がいて、親子連れが餌をやっている。長閑である。子供の遊具施設もある。狩猟犬の訓練をしている人もいる。樹齢数百年の大木の下で昼寝をしているひともいた。カップルも家族連れも、一人の人も、広大なハイドパークは、私のような異国の老人をも温かく受け入れてくれる。歩いたからこその喜びが体を満たした。

隣接するケンシントンガーデンの風景

疲れた足をしばし休め、お腹が空いたので、そこから94番のバスで(ロンドン市内のバスの充実は凄い、時間があれば、パスを買っていくらでも安く旅が出来る)ピカデリーへ。

とある場所で韓国料理のレストランを見つけた。そこで午後4時すぎ早めの夕食をとる。ビビンバとチジミとビールで十分にお腹いっぱいになった。

さすがに疲れたので、すぐに地下鉄ピカデリーラインで宿に戻ってシャワーを浴び、小一時間よこになる。午後八時夕闇迫るハマースミス界隈に散策がてら、水を買いにゆきく。その後は、部屋で眠くなるまで、外山滋比古先生の(文章を書く心)を読み、睡魔が来たので目をとじた。

PS 異国での一人時間、私にとって絶対的に必要欠かせないのが本である。本さえあれば、この年齢でもなんとか、私の場合過ごせる。49年前、翻訳シェイクスピアの日本語を、異国ロンドン、日本語の聞こえてこない環境で(今思えば)繰り返し読み続けたおかげで、あれほど文章を綴るのが苦手だったのに、今では五十鈴川だよりを打つのが、老人の楽しみのひとつになっているのだから面白い。

18歳から20代、追い詰められ続けた時代環境の中を(今もだが)、泳ぎ続けこの年齢まで生きてこれたのは、異国の地で日本語に出会えたからである。今、ハマースミスの宿を一歩出れば、人種の坩堝、異国の人びとで満ちている。嫌でも日本人であることをを強く深く意識せざるをえない。

人生の仕舞い支度を、始めねばと思う年齢に差し掛かり、予期せぬロンドンへの旅が、短い滞在時間ではあれ、全く日本語が聞こえてこない環境にいる。日本語で沈思黙考をするには、普段読まない日本語の本を持って、異国の地で読むのが、私にはいちばんなのである。




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