ヒースロー空港にやって来た。ベルリンへの出発は午後七時半なので随分時間がある。荷物があるのでとにかく空港でのんびりしようと思ったのである。空港職員に支えられ、荷物を預け手荷物検査(これがことのほか厳しい、ズボンのベルト、帽子まで全て預けねばならない)済ませ、空港のカフェの中で打っている。
親切な中国系の若いカップルが充電(充電できる場所があちこちにある)していて、すぐにインターネット接続をしてくれた。旅はみちづれ、世は情けなんて、この時代死語である、何て思うのはちょっと早計である。もちろん不親切な人もいたが、ほとんどの人は、老人の私を労って、黒人の若者、白人の若い女性に何度も地下鉄で席をゆずってもらったし、劇場のスタッフは親切に対応してくれ、この5日間何一つ問題なく過ごせた。だからこそ、このようにゆったりと、空港時間が過ごせるのである。
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| 昨日テムズ川を背景に撮った |
年齢的に、一人でロンドンを彷徨き回るのに、いくばくかの不安を抱えていなかったのかと問われたら、正直不安がなかったといえば嘘になる。49年前の時も、未知の国に着いた時に強烈な不安が込み上げて来たのを思い出す。今回はそれとは全く異なる。余りにもあらゆるシステムが変わってしまっていることにたいしての不安である。 だがそれも娘から色々懇切に教えてもらえたおかげで、ほとんど不自由しなかった。特筆すべきは現金を一度も使わなかったことである。このような事はもちろんわが人生で初めてである。慣れである。一呼吸入れ対処すれば何て事はない。もう年だからとか、言葉がわからないからとか、あらゆることをネガティブに考えたら、一歩も踏み出せない。 要は心に正直に生きる勇気を養わないと、何事も未知の世界の扉は開かないという厳然足る事実である。私は老人の一人旅を奨めているのでは決してない。細心の心の準備をして望む。少々の些事の出来事は、時間がたてばいずれ癒えて思い出の一部になる。心に深く刻まれた思い出だけが残る。そのような旅が今回出来た事の喜びを臆面もなく、綴らずにはいられない。 今夜ベルリンの家族に再会し明日は日本に帰るので、今回の旅、最後の五十鈴川だよりになる。日本に戻ったらしばらく、五十鈴川だよりを打つ気が起きないような気がしている。














