ドレスデン2日目、9月14日(日曜)、見ず知らずの国で目覚め、昨夜は見えなかった窓からの景色にここがドレスデンであることを確認、車道の小川の向こうの林が見える。外は雨が降っている。
朝食は、8時半ころ、怜君の兄のトーマスさん夫妻が、ホテルまで迎えに来てくれ、怜君の母のシルビアさんとおばあさんが住む家で、おばあさんのヘルガさんが準備してくださった。
ヘルガさんは、西大寺の母を思い出させた。家の前庭は花々で満たされ、裏庭は家庭菜園、質実でおだやかな暮らしぶりがよく伝わってきた。80歳を過ぎておられたが、実にユーモアがあり、激動の時代を生き抜いてきた、芯が強く、お国は違うが苦労人といった赴き。怜君がこよなく愛しているのがわかる。
ヘルガさんの朝食は、きわめてドイツらしい伝統的なもの、多種類のおいしいパン、(怜君が向かう途中の村のパン屋さんでたくさん買ってきた)ハムにチーズに、生肉、コーヒー紅茶、ジュース、果物、とてもではないが食べきれないほどの、ボリュームでテーブルが満たされていた。
孫が連れてきた遠来の新しく家族になる、初めて会う我々を、心をこめて迎えてくださっていることが伝わってきた。異邦人を温かくもてなす気遣いは、怜君にしっかりと受け継がれていることが私にはよくわかった
怜君のお母さんとも初めてご挨拶、共に朝食を頂いた。怜君の母が住む実家と、我々のホテルは車で10分くらいのところに在りそんなに遠くはない。
ところで、怜君は5人兄弟の真ん中、朝食には母と共に暮らしている一番下の妹のティナさん、近所に住む長男のトーマスさん夫婦と一歳半の息子さんも参加。総勢11人での、にぎやかこの上ない朝食となった。私も5人姉兄弟、小さいころの食卓を思い出した。
ゆっくりと和やかな朝食タイムを終え、リビングに移動、妻が用意した日本からのささやかなプレゼントをそれぞれに手渡して、その場で開けてもらった。封を開くたびにみなさんの表情がほころぶのがよくわかって、我が妻の心づくしが、伝わったのがわかり嬉しかった。
ヘルガさんが、シャンパンを開けてくださりみんなで乾杯した。ビールとワインとシャンパンの国なので、それぞれの飲み物に似合うグラスが棚にはたくさん並んでいる。
しばし再び款談の後、お兄さん家族は帰られ、我々は小雨の中、ヘルガさんの温室菜園場を見学、妻は庭と菜園に関心があるので、好奇心が抑えられないようだった。怜君の植物好きもきっと、ヘルガさんの影響にちがいない。
その後雨が上がったので、妹のティナさんも一緒に、近所を約一時間以上散策、怜君が道案内役、この6人での散歩は実に楽しかった。初めてのドレスデン郊外の森、所々に大きな木があって、樹が高い。
雨でぬれたその大きな木に、大きなカタツムリが這っていたりする。歩いていると二頭馬が放牧されていて草をとってみんなで食べさせたりした。しばし歩いていると、今度は二頭の豚がこれまた広い敷地に放たれていて、柵のそばにリンゴの木があったので、その実を豚さんにあげることに皆で興じた。
小学生のころ、近所で豚を飼っていた農家があり、その豚が実においしそうに餌を食べるのを飽かず眺めた記憶がよみがえってきた。怜君がリンゴの木を揺さぶると、実がバラバラと落ちてくると同時に、雨のしずくも落ちてきて、ワーワーキャーキャーしばし我々は子供に還った。
舗装されていない小路の散策は、今書いていてもくっきりと印象が刻まれている。散策を終えると、シルビアさんお手製の昼食タイム、これまた伝統的なソースをかけたステーキ、付け合わせはポテトと赤キャベツ、飲み物はもちろんビールと赤ワイン。
やはり肉には赤ワイン、グラスが大きくて贅沢なランチ。シルビアさんが住む3階のリビングの大きなテーブルでゆっくりと頂いた。シルビアさんは学校の先生をされているとのこと、猫を8匹くらい飼っていて、猫好きの妻と娘は盛んに猫たちとじゃれていたが、同じ猫でもやはり洋風の猫という感じが私にはした。
午後3時、お父さんのピーターが車でお迎えに来て、今度は現在お父さんが住むマンションに移動。伴侶のアンケさんと、リィヒャルト君がお出迎え。ここでもプレゼントを手渡したのち、ティータイム。ごく一般的な、ドイツ人の住まいを見せていただいたが、とにもかくにもきちんとしているというのが、私の印象。
もちろん住んでいる方の個性が、とくに家の内部には出ると思うが、アンケさんの趣味のいいセンスが随所に感じられた。間接照明でキャンドルがテーブルの上には欠かせない。息子さんの部屋、寝室まで見せていただいたが、やはり畳民族とは、風土環境の違い、そもそもの文化的な土壌が異なることをあらためて認識した。
私の年齢もあるのだろうが、いろんな細部に若いころとは違って眼がいってしまうのである。夕食は雨上がりのガーデンで、バーベキュー。ペーターさんとアンケさんのおもてなしが沁みた。バーベキューに下の弟のマーカスさんとその恋人も参加した。ビールとワイン、ソーセージサラダ他。
おいしいフードを朝昼夜と食べ続けた事と、時差の疲れが押し寄せ、食後焚火のそばで気がつくと睡魔に襲われ、こっくりこっくり。
9時過ぎ、86番のバスと徒歩でホテルへ。さすがに疲れがどっと出て、バタンキュー。ドレスデン二日目は、新しい家族との交流に一日が過ぎたが、徐々に私の中に怜君の家族構成が、しっかりと私の中で、整理されてきた。
楽しく 読ませて頂いております。まるで 映画を見ているような。
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