昨日午後、井原市西江原町在住の、漆器作り一筋の知人N氏を、妻とI子さんと訪ねた。
I子さんとはウクライナのチャリティ演奏会を企画することで奇縁を得たNHK記者である。私の娘のような年齢の方で、彼女が私を夕方の時間帯の番組で取材し、オンエアーしてくださったときにお渡ししていた亡き父の文集を、郵送ではなくわざわざ我が家まで持参、届けてくださったので、そのまま西江原へ同行することになったのである。
私と妻のの宝となったN氏のお椀 |
世代を越えて、彼女は好奇心が旺盛なだけではなく、綿密に取材し、きちんと編集し伝えてくれる力が、若いのに備わっている。よりお近づきになれたら嬉しく思い、ほんとうに久方ぶりにN氏を訪ねる半日ドライブ旅に誘ったのである。二つ返事でOKしてくれたので、昼食を済ませ我々3人で、西江原に向かった。西江原山中最後ちょっと迷ったが、なんとか3時前に無事にN氏の工房のある住居についた。
さて、漆器作家であるN氏との出逢いの徒然を記せば、長きになるの割愛するが、今回のウクライナ支援のチャリティ演奏会を企画したことに、素早い反応、応援をしてくださったことにたいしてのお礼をかねて、拝顔にうかがったのである。分けても、私がカテリーナさんに岡山での演奏会の思い出に何かプレゼントしたく、N氏の作品を所望したところ、なんと,代金を受け取らず、カテリーナさんに気持ちよくプレゼントしてくださったのには、恐縮、なんとしても直接お礼をつたえたかったのだ。
結果、いま五十鈴川だよりをうちながら想うことは、出掛けてほんとうによかったという平凡な感懐である。はじめてお会いしたのは、中世夢が原でガンガン企画していた頃だから20数年前だと思うが、会ったことはあれど、長い時間話し込んだことはほとんどない方なのである。年齢も知らない。そのような方なのだが、奥さま共々私の企画には折々足を運んでくだる、ありがたきお人、私に言わせると遠いところからしっかりと、私の企画を見届け、即支援応援してくださる目利きの人なのである。
じっと動かず、漆器作り一筋の、一途極まる枯淡の花とでも言うしかない存在感を、醸し出す私の交遊関係では稀な人、こういう揺るがぬ人が、私の企画を応援してくれるのは、企画者冥利とでも言うしかないほどに、嬉しく在りがたいのである。
今回の半日久方再会旅に、妻とI子さんが同行してくれたことが、これまたありがたかった。特に若いI子さんを誘えたことが。歳月は流れ万物は移ろう、だがN氏のお顔は、風雪を樹木、漆と共に生き抜いてきた充実の清々しさに満ちていた。思いがけないお土産をいただいた。大切な家族と共に地に足のついた生活のなかから、氏が作られた漆塗りのお椀である。
身に余る一品、嬉しいという他に言葉がない。チャリティ演奏会を企画したご褒美と厚顔を省みず、私は有り難くちょうだいした。そして想う、このお椀のような無名声の企画を打たねばと、名も無き老いの花を刻まねばとのあらたな念いが湧いてきた。
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