【 ウクライナ危機後の世界】宝島社新書、薄い本である。2022年7月に出版されている。大野和基さんという国際ジャーナリストが選んだ世界の識者7人にインタビューしたものをまとめた本である。
昨年後半から、私は新聞の購読を辞めた。取り立てて深い理由があるわけではない、がもう十分だとなぜか思ったのである。一日の私の時間、新聞に割いていた時間を他のことに当てるようにしただけである。
情報が極端に入ってこなくなったということは否めないが、余分な情報は一切入ってこないので、今のところ普段の私の生活にはいっさいの支障がない。ますますもって時代に取り残されているかのようなでくの坊老人生活を生きている、といっても過言ではない。
だがそういう木偶の坊的生活が、どこかここちいいのだから自分としては、浮世離れ(世捨て人にはほど遠いが)生活をどこかで楽しんでいる。
話を戻す。そのような生活を送る私がいちばん頻繁に通うのが図書館である。平均すれば一週間に一度は必ずといっていいほどゆく。そして数十分ほど本を眺める。自ずと必ず読んでみたいと思わせられる本とで会うのである。
今の私の生活の知的刺激を受けるもっとも大切な場所である。一日に読む本の時間は限られている。これから私が手にする本はますますもって、オーバーではなく一期一会的になる。大袈裟ではなくそのような厳然たる事実に想いを馳せるとき、ギリギリの今をいきられているある種のよき本との廻り合いに、よかったと安堵するのである。
さて、昨日読み終えたウクライナ危機後の世界、大野和基氏がインタビューした7人の識者で名前だけ知っていたのは、ユヴァル・ノア・ハラリ、ジャック・アタリの二人。ポール・クルーグマン、ジョセフ・ナイ、ティモシー・スナイダー、ラリー・ダイアモンド、エリオット・ヒギンズ、に関してはまったくなにも知らなかった。
そのような私がなぜこのような本を手にしてしまうのか、自分でもよくはわからない。ただ本のタイトルも去ることながら、老人の私ではあるが、いまだにどこか世界の行く末に漠然たる不安感のようなものがあまねく覆い尽くしているかのような、時代状況にどこかアンテナをたてておかないとまずいのではないかという感覚が、ぬぐえないからだろう。
私が知らなかった5人の識者のなかで、もっともビックリさせられたのはエリオット・ヒギンズというオープンソース調査集団【ベリングキャット】の創設者である。小さいが大きい真実の行方に迫る良心集団。エリオット・ヒギンズという一人の人間が10年前に立ち上げた調査報道情報の良心、べリングキャット。名前だけは知っていたがより深く知りえただけでも、五十鈴川だよりに打ちたくなるほどに刺激を受けた。
フェイク情報が極端に蔓延し、にわかには世界の真実がかくも分かりにくく、複雑怪奇魑魅魍魎情報戦が跳梁跋扈する生成AIインターネット世界、最後はやはりヒトの心を失っていない良心の存在に勇気付けられる。老人であることを自覚しつつ、しかし世界にたいしての知的関心のアンテナが錆び付かないように生きる最低の努力を怠るようになったら、それこそ不味いと、どこかでもの想う春である。
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