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2023-10-04

筑前琵琶演奏会、第7回光の会~つなぐ~を聴きに出掛けました。そして想う。

 先週の日曜日、大阪の国立文楽劇場小ホールまで筑前琵琶を聴きに行ってきた。忘れもしない、筑前琵琶を生まれて初めて聴いたのは5年前のことである。場所は梅田のとあるホールであったと記憶する。奥村旭翠というかたの。これまでの人生で何回か琵琶の演奏は聞いたことがあるのだが、このかたの筑前琵琶を聴いたのは初めてである。

妻が丹精した秋の向日葵

なぜ聴きに出掛けたのか。聴いてみたかったからとでも言うしかない。当時リア王の発表会を終えたばかりで消耗していた私は、なにか聴いたことも見たこともないような世界に触れたいという欲求が強くわいていていたのだ。そんなおり新聞でたまたま大阪で奥村旭翠さん(気軽に呼ばせていただきます。人間国宝であられる)の演奏会があるのを知り出掛けたのである。

以来今回も含め3回、奥村旭翠さんの演奏を聴いている。ただ前2回と異なり、今回は無料の発表会。というのは長くなるのではしょるが、奥村先生が後進の指導育成のために7年前から始めた光の会の発表会だからなのである。

中学生、高校生、大学生、社会人30才未満、計8名(男性2名)による発表会。奥村先生はお弟子さんたちの演奏会に足を運んでこられたか方たちのために最後に一曲【熊谷と敦盛】を謡い演奏してくださった。流れるように自然体、素晴らしかった。

筑前琵琶を伝えてゆくために、後進の育成に心血を注いでおられる先生のお姿を遠くから拝見できただけでも出掛けてよかったことを、ただ今日の五十鈴川だよりに打っておきたいだけなのである。

琵琶のつま弾き、音色謡いにききいる体、そういう年齢に自分がなっているのだとしか言えないが。奥村旭翠先生のなんとも言えないお人柄が演奏から伝わってくるから、それに触れたいがために、多分足を運ぶのである。今聴いておかねば(それは多嘉良カナさんにも通ずる)

それは気品の香り、日本人の伝統の粋(すい)が匂いたつからとでも言うしかない体のものである。まろやかな物言い語り口も先生は独特(凛として静かで琵琶独特の佇まい)自然(じねん)まったくお上手がない。ひたすら芸道に真摯に邁進しておられる。それが私のようなものにも伝わってくる。

縁というものはまったくもって不思議という他はない。聴けば聴くほどすこしずつ染みてくる。音色が耳に優しい、心身が休まる。先生の演奏姿は美しく比類がない。老いの美が燦然と輝く。無比だから先生がお元気であられる間は聴いておきたいと、今後も私は出掛けるのである。最初に聴いたときに住所を書いておいたら、以来案内を送ってくださる。いまや奥村旭翠さんの私はファンなのである。

PS 文楽小劇場は大阪の盛り場道頓堀の近くにある。小ホールには100にも満たない観客ではあったが、その中の一人として若い方たちの筑前琵琶を受け継ぐ情熱に触れることができ、出掛けて本当によかった。

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