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2018-10-13

読書の秋、佐藤優氏の本を読む。

自分でも驚くくらいの、50代まではおもい及びもしなかったほどに、静かなというか、家から出掛けなくなった自分がいる。

引きこもりではなく、家で静かに何かをじっと過ごす時間が増えて、そのことの方が、自分にとって気持ちがいいのである。

最近、弓の稽古のことにはほとんど触れていないが、ささやかに弓の稽古時間を、どんなにやる気がない時でも、弓に触れるように心がけている。

幸い、我が家のリビングの空間は天井が高いし、床が木なので道場とまではいかないが、弓の稽古が可能なのである。

午前中肉体労働の仕事を終え、帰って昼食を済ませ、少し休んだのち、ロミオとジュリエットの 長いセリフを書き写したり、本を読んだりする合間合間に、弓の素引きほかの所作の稽古をすると、実に気持ちが引き締まって、物事がはかどる。(ような気がしている)

平日の雨の日は、肉体労働の仕事もないし、妻も仕事なので、食餌時間も含め夕方まで、一人の時間を存分に過ごすことができる今を、ことのほか幸せに感じている。

逆に考えれば、これまでの人生時間、あまりにもひとり時間を過ごさずに来たのではないかという反省が私に生まれているのである。(あまりにも学ばなく人生を過ごしてきた)

だがこういう内省というか、反省というか、年齢相応の個人的心境などというものは、その年齢にならないとなかなか訪れない、今の自分に忠実であるだけである。

時間単位で、順繰り過ごしていると、時間は瞬く間に過ぎて、妻が帰ってくる時間となり、二人で夕食の準備や、メルの散歩などを共にし、夜はリラックスタイムを過ごし、早めに床に就き、明日に備えるといった按配の、秋の日々なのである。

さて 、読書の秋である。いま、佐藤優氏の【交渉術】という本をゆっくりと読んでいる。全17章の12章までを読んだところ。実はこの本2009年に買った本で、いつか読もうと思っていたのだがようやく手にしている。

徐々に引き込まれる。実体験に基づいての、実に氏らしい記述で書かれていて、人柄が文体に現れていてぐいぐい引き込まれる。

これだけの内容の本が、1667円、私にとっては安いというほかはない。歴代3人の総理(橋本・小渕・森)と直接言葉を交わした、外交官時代の北方領土問題交渉における、繊細極まるやり取りの記述には何度も驚かされた。(よくぞ書いてくださった)

物事の真実というものは、マスコミ等の報道なのでは 決して余人には伝わらないものであることが、この本を読むと実によくわかる。

それにしても、魑魅魍魎たちとの国益ををかけた異国・外国交渉の真実のやり取りの、命を懸けた仕事ぶりはすさまじい。

佐藤優氏が、背任容疑で逮捕され、外務省を去ることがなかったら、このような現代日本にとって、稀に見る有能な作家は生まれなかったのかもしれない、と考えると、運命というものはわからない。

ともあれ、私が佐藤優氏の本を初めて読んだのが2006年、【国家の罠】(外務省のラスプーチンと呼ばれて)である。以来現在に至るまで、どれほど多くのことを一人の庶民として、学ばせていただいているか、感謝しかない。

新書版でも内容の濃い本を多数出されている
物事の真実などというものは、重層的に、多面的に、複眼的に、歴史的に、地政学的に、博覧強記で、しかも人民的な思考を失わず、国益を考えられる真の意味でのインテリジェンスの持ち主においてのみ可能なのだということが、凡夫の私にもかすかにわかる。

語学の教養、キリスト教神学の教養、マルクスの講義他、皆目私にはわからない本も多くあるが、氏独特の語り口、文体、人柄には、私にも伝わる熱い情熱が随所に感じられる。

私の好きな、今は亡き米原万理さんが、困難な状況に陥ったい佐藤優氏のことを案じ、電話を入れるくだりなど、(獄中記にある)感動する。

交渉術に記されている、当時の森総理とのやり取りなど、単細胞の私は目頭が熱くなった。あらためて思う、表面的な報道ほかをうのみにしてはならない。(のせられやすい私は反省する)

佐藤優氏の御本を少しでも読みこみ、氏を通して知る、学ぶ力を、老いてゆく時間の中で見つけたいと、秋の陽光の中念じる私である。

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